
「植物に毎日ふれてほしいですね。飾って終わりではなく、ちゃんと関係を持ってほしいんです」。そう話すのは、植物を通して豊かな空間づくりを手がけるユニバーサル園芸社日本橋支店長の渡辺亮さん。オフィスや商業施設、個人の住まいと、さまざまな場所にグリーンを届けてきたユニバーサル園芸社が大切にしているのは、人と緑の距離を近づけ、日々の暮らしの中に、「触れる」「見る」「気にかける」というささやかでありながら、大切な関わりを植物とのあいだに生み出すことだ。
完成して間もないTHE GRANDUO SAKURASHINMACHI(東京都世田谷区)に、ユニバーサル園芸社からグリーンが届けられた。屋外と屋内がひと続きに感じられるよう計画された本レジデンスのバルコニーは、外でありながら室内の延長のようにも感じられる。その境界に植物が加わることで、住まいにみずみずしさがもたらされた。光と風が緑をやさしくゆらすTHE GRANDUO SAKURASHINMACHIで、ユニバーサル園芸社が提案するグリーンの取り入れ方や空間にもたらす役割、そして植物とともに暮らす豊かさについてうかがった。

空間と響き合うグリーン
シンボルツリーとしても人気のオリーブ、シルバーがかった緑葉のウェストリンギアとアカシアは陽の光を、逆にタマシダは日陰を好む。そして丈夫で存在感のあるソテツ。オージープランツを中心とした、扱いやすく、個性豊かな緑によって、THE GRANDUO SAKURASHINMACHIの白を基調とした静謐(せいひつ)な空間に柔らかな雰囲気が広がる。

室内外がシームレスにつながるTHE GRANDUO SAKURASHINMACHIでは、グリーンの存在が内外の関係に一層自然な空気感をつくりだしている。「窓の内と外に植物があると、境界が曖昧になるんです。植物が連続して見えることで、室内と外部がひと続きに感じられる。内と外を一体感のあるものとしてつなぐうえでも、植物は大切な役割を持っていると思います」(渡辺さん)
建築の魅力をさらに引き出してくれるグリーンは、「空間を後ろから支える存在」でもある。「グリーンは空間において、主役ではなく、どちらかというと脇役として捉えられることが多いと思います。家具や内装であったり、その空間に存在するモノを映えさせるのも、グリーンの大切な役割です。だからグリーンを選ぶ際も、建築やインテリアに合わせた葉の形や枝ぶり、鉢のデザインを考慮してセレクトするようにしています」

ガラス戸の内と外に植物を置くことで空間がシームレスにつなげられる(ユニバーサル園芸社内)。
都心の集合住宅でグリーンを楽しむための第一歩
植物の基本的な生育条件やコツをおさえておけば、都会のマンションでもグリーンを生き生きと育てられると渡辺さんは話す。「人に個性があるように、植物にもそれぞれ性質があります。暗さに強いものもあれば、明るい場所を好むもの、さらに明るくないと育ちにくいものも。植物が枯れる理由は、光が足りないか、水をやりすぎてしまうかのどちらかであることがほとんど。マンションの場合は光が足りないケースが多いです。ですから、そのお部屋がどの方角にあって、どれくらい光が入るのか、どんな植物を置きたいのかを明確にイメージして園芸店に行っていただくと、プロの方がきちんと案内してくれると思います」。植物を置きたい場所の写真を撮っておくと、なおわかりやすくよいのだそう。

ユニバーサル園芸社 渡辺亮さん。
さらに、空間にインパクトをもたらすような大きなサイズの鉢植えを選ぶ場合は、住まいに運び込めるかどうかも大切になる。「家具を買うときに、搬入するのにドアのサイズは大丈夫か、廊下の広さはどうかと確認しますよね。私自身、大きな植物を2階に運ぶときに階段を曲がれなくて、吊り上げたことがありました。そうした搬入経路も含めてプロに相談するとスムーズです」
もうひとつ大事なのが道具だ。水やりの道具、肥料、剪定(せんてい)ばさみなど、グリーンと付き合っていくうえで必要になるアイテムは意外と多い。「そうしたものの収納場所も考えておくといいと思います。集合住宅という比較的限られたスペースのなかで、それら道具をどう隠すのか。またどのようにしまえば、お手入れの際に取り出しやすいのか。そういったことも併せて考えたほうが、理想の暮らしが実現しやすいと思います」

植物を置く意味が変わってきた
植物を単にインテリアとして飾るだけでなく、限られた空間の中で、どう置くか、どう見せるか、どう育てるか。その選択肢も広がっていると渡辺さんは話す。「昔から植物が好きな人は多かったのですが、コロナ以降はより需要が増えました。当時は6畳一間のような間取りでも大きな植物を買われる方がいて、配達に行って驚いたこともありました。部屋の中に植物を置く意味も変わったのだと思います」。植物のレイアウトにも変化がある。「床に大きな鉢を置くだけでなく、空間を立体的に演出できるハンギングの商品は人気です。床置きですと場所が固定されてしまいますが、その点、上から吊るすハンギングは自由度が高い。カーテンレールを使う方もいらっしゃれば、ダクトレールにフックをつけて利用する方もいます」

緑あふれるユニバーサル園芸社内。
グリーンの種類はさらに多様化している。THE GRANDUO SAKURASHINMACHIにも置かれたオージープランツも人気だ。「オーストラリア原産の植物で、乾燥や光に強いものが多く、葉や枝ぶりのドライな雰囲気も個性的です」。さらに以前から人気のある、塊根植物や多肉植物に加え、クラシカルな観葉植物にも注目が集まっているという。「スパティフィラム・ピカソやアロカシアなど、葉の存在感が大きいタイプです。それなりにお世話は必要ですが、手をかけたぶん、ちゃんと成長します。飾りとして置くというより、グリーンと積極的に関わりを持てるタイプが好まれているような印象を受けています」

ユニバーサル園芸社では、日替わりで好きな花や鉢植えをデスクに飾ることができる。
四季を運ぶ植栽たち
荻窪駅から徒歩8分に建つ、2026年3月末完成のGranDuo(グランデュオ)荻窪3(杉並区上荻)。30種類を超えるさまざまな樹木と地面を覆うように成長する地被(ちひ)植物が植えられている。その植栽計画を担ったのもユニバーサル園芸社だ。物件を担当した設計者は、その品質、センス、そして植物にかける思いの深さ、すべてにおいてユニバーサル園芸社に絶大な信頼を寄せている。「GranDuo荻窪3は、とりわけ植栽が大きなコンセプトでした。とにかく四季を感じられるような選定にしたいと考えていました。植物が多ければ多いほどいいというわけでは決してないんです。他方で、外からの視線を遮る役割も植栽は担っています。緑の量と視線の抜けの絶妙なバランスを探り、ユニバーサル園芸社さんと相談し、ひとつひとつ植栽を決めていきました」
通りに面した敷地にはハイノキとドウダンツツジを植えた。「ハイノキもドウダンツツジも、春になると白い花が咲くんです。あとゲッキツとマテバシイといった常緑樹も入れています。特に夏は青々とした緑がみずみずしく、葉の緑が濃くなるぶん少し重厚感はあるのですが、陽が落ちたときの影がまた美しいんです。秋は一番よくて、ドウダンツツジの葉が真っ赤に染まる。本当にきれいですよ。管理に手間はかかるのですが、落葉樹も入れています。冬に葉が落ちることでより室内に陽をとりこめますし、葉が落ちた樹も季節を感じられていいのではないかと思っています」

GranDuo荻窪3と植栽。
植栽の配置にもこだわった。「入居者のみなさんはエントランスからそれら四季折々の植栽のそばを通って駅に向かうので、『白い花が咲いたから春が来たな』『秋だな、紅葉がキレイ』と、朝夕、季節を感じられると思います。それが実現できたのも、ユニバーサル園芸社さんのご協力あってこそです。物件を建てることで都市の緑を増やす取り組みに力を入れていますので、設計するにあたり、本当に素敵なパートナーに巡り会えたとうれしく思っています」。建物はもちろん、樹々のひとつひとつにまで込めた設計者の思いがユニバーサル園芸社によってかなえられた。春夏秋冬、軽やかで透明感のあるほどよい緑に囲まれたGranDuo荻窪3は、入居者だけでなく、通りを行き交う人々にもまた季節をもたらす。

GranDuo荻窪3
飾るだけでなく、関係を持つ
住まいにおけるグリーンの役割は、個人の暮らしだけでなく、建築や空間づくりの現場でも変わりつつある。オフィスや商業施設、集合住宅などでも、植物はあとから置かれる装飾ではなく、空間を構成する大切な要素として考えられるようになってきた。渡辺さんが繰り返し語るのは、植物と人との距離だ。「眺めるだけでなく、ぜひ触ってみてください。そして触らないと成り立たないような、緑の置き方をしてほしいと思っています。植物を見ていると気持ちが落ち着くといったリラックス効果は、研究が進んで実証もされています。ただそうした効果も、触ったり、動かしたりすることで、関わりをきちんと持つほうが、高くなると思うのですね」。何もしなくても枯れにくい植物を選ぶ。それもひとつの選択ではある。しかし、手がかからないということは、植物をいつの間にか背景の一部にしてしまう。

ユニバーサル園芸社には、「人と緑の関係づくり」という言葉があるという。植物を置くということは、インテリアのアイテムを単に足すことではない。水をやる、葉を見る、鉢を動かす、枝を切る。そうした関わりを通して、植物との距離が近くなっていく。「僕らは会社や施設のグリーンの管理もお引き受けしているのですが、絶対に植物が枯れてしまう部屋ってあるんですよ。日当たりの問題もあるのでしょうけど、それだけじゃない気がします。おそらく空気の流れが悪い場所なのだと思います。逆に植物が育ちやすい部屋というのもあって、人がよく使っていたり、社員の出入りが多い部屋だったり。つまり空気がしっかり流れている。そういうことも植物は教えてくれているのかもしれません。『自分ここダメです。空気がよどんでる』とかって(笑)。植物との関係をきちんと持ってほしいんです。植物と人の距離を縮めてほしい。はじめはキッチンの片隅で、大根の葉を水に浸けるだけでもいいと思います。成長を見守るのはきっと楽しいはずです」
飾るだけではなく、触れる。見るだけではなく、関わる。THE GRANDUO SAKURASHINMACHIで始まるのは、植物を置いて眺める暮らしではなく、植物とともに時間を重ねる暮らしなのだ。

〈関連記事〉
・「Find your sway」ハンモックでかなう暮らしのかたち ― nook the hammock×THE GRANDUO SAKURASHINMACHI
・建築家・窪田 茂|目指しているのはデザインで未来を楽しく
・SAKURASHINMACHIの豊かさを生む、あたらしい連なり
THE GRANDUO SAKURASHINMACHI
〒154-0015 東京都世田谷区桜新町1-22-10
株式会社ユニバーサル園芸社
1968年創業。オフィスや商業施設、公共空間などを中心に、レンタルグリーン、植栽プランニング、施工、メンテナンスなどを手がける。また、国内最大級の植物養成温室とファームを持ち、多種多様な植物の育成と再生にも努める。法人向けのグリーン事業を基盤としながら、近年は個人の暮らしに向けた店舗展開にも力を入れている。「the Farm UNIVERSAL」では、植物を買うだけでなく、カフェや屋外空間を通して五感で植物を楽しむ場を提案。「SOW the Farm UNIVERSAL」では、都市の暮らしに寄り添う店舗として、住まいに取り入れやすいサイズ感の植物や鉢、園芸用品などを扱う。空間づくりから日々のメンテナンスまでを通して、人と緑の距離を近づける提案を行っている。