ハンモックブランド「nook the hammock(ヌック ハンモック)」の代表・須藤カンジさんは、「ニッチなものにこそ、美意識が宿る」と、極上の時間を共に紡ぐ相手に、無駄がなく、シンプルで、静かに個を預けることができる、ハンモックを選んだ。

THE GRANDUO SAKURASHINMACHI(東京都世田谷区)の最上階に設けられた南北に抜けるバルコニーはリビングと連続した空間としてデザインされ、期せずしてハンモック用のフックが設置されている。本当の贅沢(ぜいたく)とは何か、住んでいて楽しい、心地いいを追求したTHE GRANDUO SAKURASHINMACHIを須藤さんと訪れ、ブランドに込めた思いや理想的な暮らしについて聞いた


“ハンモック”という選択は必然だった

最初にやりたかったのは、実は食品だったと話す須藤カンジさん。「当初はブッシュクラフトやソロキャンプといった、最低限でミニマムなキャンプスタイルにハマるキャンプ飯を考えていました。フォーク片手にラフに、それだけ食べてればOKっていう、初心者でもだれでも簡単に『ソロキャンプってカッコいいな』って気分に浸れる体験が大事だと思ったです」

映像クリエイターであり、グラフィックデザイナーとしても活躍する須藤さんは、味はもちろんパッケージデザインにもこだわり、“カッコいい体験”そのものを提供したいと考えた。だが、いざ食品を販売するとなると、法律や設備などさまざまなハードルがあり、やむをえず断念する。「そこで改めていろいろなアウトドアギアがあるなかで純粋にカッコいいものを探して、最終的にこれしかないと思えたのがハンモックでした。ハンモックって、すごくシンプルなのにいきなり玄人っぽい本格的なアウトドア体験ができるです」

テントをたててみんなで楽しむグループキャンプやファミリーキャンプに対し、ハンモックはひとりか、居てもふたり。丈夫な2あれば、そこにフックをひっかけて張るだけで完成する。人手も大げさな準備も装置もいらない。「無駄がなくて、シンプルで、ひとりで静かに個を預けられる。そこがメチャクチャカッコいい。ハンモックは、そんなことがかなう唯一の遊び道具だと思っています」

流行(はやり)を捨ててでも守りたかったもの

2024年4月、須藤さんはハンモックブランド「nook the hammock」を立ち上げた。「“nook”という言葉には、“隅っこ・隠れ家・人があまり訪れない場所”といったような意味があります。この言葉に出会ったとき、直感的に、『これだ!』と思いました」。片すみの居心地のいい場所を表すともいわれる「nook」を冠したブランドから生み出されるハンモック。アウトドア業界で実績のある中国の工場と連携し、細かな調整と改良を重ねて理想の形を実現させた。

「どこでも楽しめて、安心してくつろげること」―ブランドとしての理想を貫くために、あえて手放した機能もある。「いまUL(Ultra Light)がアウトドア界隈で大ブームなんです。でも『nook the hammock』は、あえてULを捨てました」。ULとは、ハイキングの装備において、水や食料を除いたすべての装備を4.5kg以下に軽量化することをいう。「ULハンモックは200gほどの超軽量のものもありますが、『nook the hammock』のハンモックは約950gです。確かに、ULハンモックは素材も薄く軽い。技術も進歩しているので強度的には問題ないのですが、軽さや素材感ゆえに不安を感じる声を実際に耳にしましたし、僕自身もそのひとりでした。もちろん、荷物を担いでハイキングで向かうスタイルも魅力的ですが、実際にはクルマでアクセスするキャンパーも多いので、荷物の重さはそこまで大きなハードルにはならないと感じていました。『nook the hammock』のハンモックは250kgぐらいまで耐えられる強度を確保しています。軽さより“安心して身を任せられること”を優先しました」

その姿勢は、敷地の読み方にも表れる。
「規制も土地の個性と捉える」というのが井手さんの立ち位置だ。北側斜線や容積率の制約を、設計の邪魔者として戦うのではなく、その敷地固有の条件として素直に受け止め、創造性と経済合理性を同時に引き出す。制約を逆手に取る、とよく言うが、井手さんにとってそれは戦略ではなく、もともとの姿勢に近い。

大切なのは、いかに自分らしく遊ぶか

須藤さんは昔から「みんなと同じもの」には惹(ひ)かれないタイプだったという。「子供の頃からみんなが持っているものがなぜかすごく嫌いで。例えば戦隊ヒーロー。みんな赤レンジャーが好きだけど、僕は青や緑レンジャーを選ぶ。実は、ああいうサブキャラって強いんですよ。そういう、“実は”ってところにカッコよさを見出していました」。流行ではなくニッチなものを選ぶ、選んでしまう。そして、ずっと真剣に遊びを追求してきたいまとなっては、そんな自身の感覚に確固たる誇りを持っている。「カッコ悪い人のバク転より、カッコいい人のでんぐり返し」。須藤さんにとっての“カッコよさ”をあらわす言葉だ。「カッコよさって、その人の内側からにじみ出てくるものだと思います」。目指すのは、流行を追うことでも、売り上げでもなく、「いかに自分らしく遊べるか」。須藤さんにとって、ハンモックとの出会いは、運命だったのかもしれない。

長年、登山をしていた父親に連れられ、幼い頃から山に親しんできた須藤さんは、いつの頃からか大のアウトドア好きになっていた。父親から受け継いで、いまでも使っている登山のギアもある。好きなキャンプスタイルは、やはりソロ。「昨年は熊の問題がありましたので少し控えましたけど、相棒の犬のマーフと一緒に、山梨県をはじめけっこうな山奥まで、愛車・ディフェンダーで乗り入れて、夜通しキャンプを楽しんでいます」

もちろん寝床はハンモックだ。「僕は年中、外で寝ていますが、これからは季節もよくなりますし、お酒を飲んでリラックスしてハンモックに揺られて眠る。本当に最高です」。四季折々の自然の中で揺られ、漂いながら眠ることの特別感。「あのハンモックのよさは経験しないとわからないんですよね。一度寝てみるとこんなに気持ちいいのかと驚く人が多い。設置も含め、ハンモックって経験が必要そうにみえて、“実は”、本当に簡単なんです。だって乗るだけですから(笑)。ブランコと一緒です」

ハンモックのある暮らし×THE GRANDUO SAKURASHINMACHI

高級賃貸レジデンス「THE GRANDUO SAKURASHINMACHI」は地下1階・地上3階建て、全12戸のメゾネットタイプで、全戸南北に光と風が通り抜ける構造になっている。2階-3階タイプの最上階3階に設けられたバルコニーはパノラマウインドウでリビング・ダイニングと連なり、部屋の内と外のシームレス化を実現。解放感と四季の移り変わりが感じられるようデザインされている。その特徴を活かし、都会の暮らしにアウトドアを持ち込めるようバルコニーにハンモックフックも設置された。THE GRANDUO SAKURASHINMACHIを訪れた須藤さんは、ハンモックのポテンシャルを改めて実感する。「ハンモックをつるすだけで空間が変わるというか、日常の延長線上に非日常が生まれる。そのスマートさがまた魅力なんです」

須藤さんは映像ディレクターとして、数々のミュージックビデオやCMを手がけながら、約2年間ハリウッドで最新の映像制作技術を学ぶために渡米。2019年に帰国し、目黒区で暮らしていた。「美味しいお店もたくさんあって、アクセスもよく便利なところだったのですが、なぜがものすごくストレスを感じてしまって。周りが建物だらけで、空が見えなかったんです」。思い切って、川崎市新丸子の多摩川沿いのマンションに引っ越す。「眺めがよくて空がバーンと広がっていて、自分にとって空の下にいるという感覚がこんなにも大事だったんだと気づきました」。2025年暮れに東京郊外に新居を購入。緑に囲まれた日当たりのいい庭に、広々とした特注のウッドデッキを構え、薪ストーブにピザ窯、揺れるハンモックの周りではしゃぐ愛犬・マーフ。空を満喫しながら着実に理想の暮らしをかなえつつある。

そんな須藤さんにしてもTHE GRANDUO SAKURASHINMACHIのバルコニーは魅力的に映った。「自分のようなアウトドア好きにはピッタリですね。都会というコンクリートに囲まれた外から自宅に帰ってきて、そこに自然とつながれる空間があるというのは素敵です。それにやっぱり、こんなふうにバルコニーから空が見えるっていうのが個人的にはうれしい。にもかかわらず、アウトドア感を主張し過ぎないところもとてもいい。ここにハンモックが加わることで、過ごし方の自由度が格段に広がると思います」

Find your sway!

ハンモックブランド「nook the hammock」はこの春で立ち上げ2年目を迎えた。「そのよさを本当にわかってくれる人が購入してくださっています。なんでもいいとか、興味本位ではなく、商品の性能はもちろんブランドの精神にも共感してくれるニッチな人たちとつながれることが本当にうれしい」。大勢じゃなくていい。いや、むしろ大勢じゃないほうがいい。いつか「nook the hammock」に揺られながら10人ぐらいの仲間と焚き火を囲んで、心ゆくまで語り合いたいと笑う。

“Find your way(自分の道を見つけよう)”という言葉がある。それにかけて須藤さんが考えた、“Find your sway”というフレーズ。「まさに『nook the hammock』の企業理念にピッタリだと思っています。『あなたが考えたの!』って、バイリンガルの妻にも感心されました(笑)」

当初カッコいいキャンプ飯を手がけたいと思っていたという須藤さんが語った、アニメ「ルパン三世 カリオストロの城」(79)で、ルパンと次元が食べるミートボールスパゲッティの話。「あれって本当に美味しそうですよね。でもそれはルパンたちが食べていたからなのかもしれません。ルパンたちだから何をやっても様になる」。カッコよさとはつまり、その内面から漂うもの。その人が、何を大切に思い、いかに生きてきたか。どれだけ自分らしさを貫いてきたか。それは、住まいにも通じる。ハンモックを通してぜひ見つけてほしい。例えば、THE GRANDUO SAKURASHINMACHIのバルコニーで、“Find your sway”——あなたらしい揺れを、あなたらしくいられる時間を。

Photograph by DESHIMA Yu

nook the hammock:https://nook-hammock.com

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THE  GRANDUO SAKURASHINMACHI
〒154-0015 東京都世田谷区桜新町1-22-10


Kanji Suto|須藤 カンジ
映像ディレクター/ nook the hammock 代表
CG・グラフィックデザイナーとして活動するなかで映像監督の丹修一氏と出会い師事。多くのミュージックビデオ、CMを手がける。その後ディレクターとして独立。2017年にハリウッドで映像を学ぶため渡米、2019年帰国。空間や造形から発想を広げる演出を得意とし、実写・CG・VRなど国内外で幅広く活動している。P.I.C.S.managementを経て、2025年7月よりGMO ENGINEに所属。2024年にハンモックブランド「nook the hammock」を立ち上げる。機能とデザイン性を兼ね備えたハンモックとして、こだわりの強いアウトドアファンから支持を集めている。