
駒沢公園から歩いて数分。広い空を背景に、犬の散歩をする人々がのんびりと行き交うこの通りは、東京にいることをふと忘れさせます。煌びやかな都心の賑わいとは一線を画した、成熟した住宅街の空気がここには漂っています。
その一角に、アースカラーの重厚な外壁と、銅のアクセントがひかえめに光る建物が現れます。
THE GRANDUO MEGUROHIGASHIGAOKA。FAITH NETWORKが展開する最高級賃貸レジデンスの新たな一棟です。
設計を手掛けたのは、建築家の井手孝太郎さん(アールテクニック)。このプロジェクトで追い求めたのは、「5戸すべてが、ペントハウスであること」という、一見矛盾した命題でした。
すべての住戸が、垂直に伸びる「唯一の家」
この建物の特徴は5戸が横に並ぶのではなく、それぞれが1階から最上階まで三層構造で垂直に繋がる「長屋形式」を採用したことです。1階のガレージに愛車を収め、スキップフロアを上がっていくと、南のテラスから北の端まで視線がまっすぐ抜ける開放的な空間が広がります。
そのさまは、まるでひとつの家が、縦に呼吸しているようです。
ここから詳しくみていきましょう。
各戸の面積は約190平米。ガレージには2台を縦列で停められます。いわば都市型のタウンハウスですが、天井の高さとフロアの重なりが生み出す立体感から感じる奥行きの豊かさは、数値では語り尽くせません。
コンクリートの躯体は非常に分厚く、空気を伝わる生活音を大幅に遮断します。上下左右を気にすることなく、深夜に音楽を流し、早朝に思い立ったように料理をする。そういう自由が、このプロジェクトには内包されています。

必然から生まれた、曲線の論理
建物の印象を決定づけているのが、ヴォールト(ドーム状)天井です。柔らかいアーチを描くその曲線は、デザインのために設けられたものではありません。厳しい高さ制限と複雑な敷地形状を前に、井手さんが数センチ単位で断面を調整し続けた末に辿り着いた「必然の形」です。

「人が見たらただのデザインだと思うはずです。でもこれは、理詰めのカーブというか、最大のボリュームが取れて、しかも南側に向かって開いていくカーブなんですよね」(井手さん)
日本の住まいにおいて、南向きの開口は採光・日照・冬の太陽熱取得において最も有利な条件です。つまりこの曲線は、高さ制限のなかで取れる最大のボリュームを確保しながら、居住性能としても最良の向きに開いている。制約のなかでの応答と快適性の追求が、ひとつの必然的な形に収束した。条件を使い切る。それがこの建物のたたずまいに、根づいた説得力を与えています。
前面道路の高低差に合わせた「段違いのスラブ」もまた同様です。地形をならすことなく、起伏をそのまま建物の骨格に取り込むことで、スキップフロアの豊かなシークエンス(空間の連続体験)が生まれました。建築が土地に重なることで、敷地の個性がそのまま空間の豊かさに転じます。
5戸のうち奥行きの深い住戸には、中庭が設けられています。南北に長い空間の真ん中に空が切り取られ、陽光が縦に落ちてくる。間口の広い住戸とはまた異なる、光の深さがそこにあります。

感じさせない快適さは機能美
優れた住まいの条件を問われたとき、「温度が均一であること」と答える人は多くないかもしれません。しかしいざ体験すると、その価値は手放せないものになります。
THE GRANDUO MEGUROHIGASHIGAOKAは、外断熱と全館空調を組み合わせ、さらに半オリジナルの床下暖房システムを採用しています。エアコンの風を感じるのではなく、部屋全体がじんわりとした体温を持つ。玄関を開けた瞬間から廊下、リビング、寝室、どこに移動してもスイッチのオンオフが不要な、均質な心地よさがある。

無駄なエネルギーを使わず、判断も要らない。その積み重ねが、一日の疲労感をじわじわと削ってくれます。ハイスペックな設備ほど、存在を主張しないもの。優秀なバトラー(執事)だって、気づかれないうちに仕事を終えているものです。
開け放す自由、閉じる選択肢
室内に入ると、廊下らしい廊下がほとんどありません。空間を区切る扉は極力排し、代わりに巨大な引き戸が配されています。開ければ三層が連なる大きなひとつの空間になり、閉じれば独立した部屋が生まれる。

「南のテラスから北側の一番端まで、スーッと見渡せる。テラスがあって、高い側があって、低いところがあって、上の空間、中間の空間、下の空間、3つの空間を1つの部屋として使える構成です」(井手さん)
この家の懐が深い理由は、住む人を1種類に限定していないことにあります。
賃貸住宅では往々にして光量が乏しくなりがちな1階も、ここでは例外です。ハイサッシの構成により、上階からの光を1階へと引き込む仕掛けが施されています。つまり、3層のどこにいても、空の気配が届きます。
日中は最上階のリビングに繋がる2階の一画をワークスペースとして使い、夜になれば引き戸を閉めてプライベートな空間へと切り替えます
来客時は3層の縦の広がりをフルに使い、普段はこぢんまりとした生活空間をつくる。同じ家が、暮らし方によって違う顔を見せます。
東が丘という街が成熟する時間を楽しむ
外壁に使われたアースカラーの素材と、銅のアクセント。銅は時間とともに色が変わる素材です。東京の空気では鮮やかな光沢からやがて深みのある黒へと移ろっていくでしょう。

駒沢公園に隣接する東が丘は、長く住み続ける人が多いとされる街です。華やかな開発が続く二子玉川や渋谷と近接しながら、それでいて騒がしさとは無縁の落ち着きを保ち続けています。ランニングシューズが似合い、休日の朝をゆったりと使える、そんな暮らしの温度が通りの空気に染み込んでいる場所です。
THE GRANDUO MEGUROHIGASHIGAOKAは、そのような街の時間軸と呼応するように設計されています。10年後、20年後、建物は街とともに成熟していくでしょう。住む人もまた、この家と一緒に少しずつ年を重ねていく。
それが、この場所が提案する、あたらしい三層の呼吸です。
Text by AOYAMA Tsuzumi
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