
用賀駅から歩いて8分。住宅街の一角に、50メートルという異例の長さのエントランスを持つ建物が計画されています。
THE GRANDUO YOGA。
それは、効率性とは真逆の価値観で設計された、8戸だけの特別な住まいです。
設計を手掛けた16Architectsの小川達也氏は、「この長い距離を歩く時間が、日常から住まいへの切り替えになる」と語りました。
距離があることで生まれる豊かさとは何か。2025年12月上旬の竣工を前に、その空間体験を追ってみましょう。
用賀駅から歩いて8分。住宅街の中に、THE GRANDUO YOGAが佇んでいる。初めて訪れた人は、もしかすると戸惑うかもしれません。なにしろ、エントランスアプローチが50メートルもあるのです。

50メートルのアプローチを持つ外観。細長い敷地を活かし、距離という新しい価値を生み出す
それは、設計を手掛けた16Architectsの小川達也さんによる狙いでもありました。小川さんはアジア初の超高級会員制サーキット「THE MAGARIGAWA CLUB」のクラブハウスなど、特別な空間づくりに定評のある建築家です。ラグジュアリーな空間の創造における技巧を今回も惜しげなく発揮しました。
46メートルのコンクリートが生む、新しい体験
建物は、長さ46メートルのコンクリートスラブ6枚で構成されています。住戸部分の幅は約10メートル。細長い形状が、独特の空間体験を生み出しているのです。
ライン照明と板張りの軒天が、長い軸線を強調します。荒々しいコンクリートの質感と、温かみのある木質素材の対比に漂う高級感もハイライトのひとつ。夜になれば、足元のライン照明が道筋を照らし出します。雨の日には、板張りの軒天の下を歩くときのように、雨音が遠くなるのを感じるでしょう。

各住戸のLDKは約12.5メートルの長さを持っています。ただし、単調にならないよう350ミリの段差を設けて、空間にリズムを与えているところに注目です。
「空間を説明しすぎることなく、住む人の感覚に任せる。そういう余白を残すことで、暮らしの中に豊かな時間が生まれるのです」と小川さん。

201号室|12.5メートルの長さを持つLDK。350ミリの段差が空間にリズムを生み、光と影が時間の流れを感じさせる
奥へ、奥へと続く空間の連続
リビング、ダイニング、ギャラリー、アウトドアリビング、そして坪庭。
これらの空間は壁で仕切られることなく、段差やガラスによって有機的につながっています。「奥性」と呼ばれるこの空間構成は、日本建築の伝統的な手法でもあります。いくつもの奥行きが積み重なることにより、複雑かつ深みある空間を作り上げているのです。

朝の光は東から差し込み、長い空間を徐々に照らしていきます。夕方には西日が奥まで届き、一日の時間の流れを空間全体で感じることができるでしょう。季節によって変化する光の角度が、同じ空間に異なる表情を与えます。
縦ルーバーが適度に視線を遮りながらも、光と風は通す。外を歩く人の気配は感じるけれど、目は合わない。都市の距離感として、「ちょうどいい」と形容するのにぴったりのバランスです。16Architects小川さんの経験が存分に生かされた設計です。

202号室|段差とガラスで区切られながらも連続する空間。奥へ奥へと視線が誘導され、実際の面積以上の広がりを感じる設計
見えない快適さを支える「FULNESS」
THE GRANDUOシリーズが掲げる「FULNESS(フルネス)」。それは、快適であることはもちろん、暮らすだけで心身が満たされる状態を目指す思想です。
全居住空間の壁面*に施されたナノメタックスコーティングが、くつろぎの空間環境を整える。全館浄水システム「良水工房」が、すべての水を高度に浄水。キッチンの水はもちろん、シャワーの水までもが、髪や肌に優しい。Human Centric Lighting Planが、時間帯に応じて光の色と明るさを自動調整する。朝は爽やかな白い光で目覚め、夕方は温かい光でくつろぐ。
これらの「見えない快適さ」と、長いアプローチの「距離の体験」が重なることで、THE GRANDUO YOGAならではの充足感が生まれるわけです。
*浴室、パイプスペース、メーターボックスを除く
ペントハウスに見る、和の統合
最上階のペントハウスは、メゾネットと屋上庭園で構成されています。
勾配屋根、和室、縁側、縦格子。これらの和の要素が、「長さ・奥性・高さ」という三次元の広がりを統合しています。屋上庭園からは用賀の街並みを一望。都市の中にありながら、空の広がりを感じられる特別な場所です。

502号室|(左)縁側と(右)テラス。テラスは勾配屋根と縦格子が和の要素を演出する

和室の畳の香り、縁側から感じる風、縦格子が作る光と影のリズム。ペントハウスで暮らす方は、ここで昼寝をするのが至福の時間だと言うかもしれません。
水平の移動から始まり、最後は垂直の広がりへ。この建物全体が、ひとつの空間体験として設計されているのです。
用賀という街の可能性
用賀は、渋谷まで田園都市線で約15分。人気の二子玉川へはひと駅と隣接。都市の利便性を享受しながら、落ち着いた住環境を保つエリアです。
週末には砧公園まで足を延ばせば、広大な緑の中で過ごすこともできるでしょう。近所には個性的なカフェや、頑固そうな店主がいる蕎麦屋もあります。何より印象的なのは、毎朝ベビーカーを押す家族連れとすれ違うこと。子育て世代が自然に集まる、そんな安心感がこの街にはあります。
THE GRANDUO YOGAは、この用賀という街の持つポテンシャルを、独特のアプローチで表現しました。都市と自然、喧騒と穏やかさ、効率と余裕。相反する要素が共存する用賀だからこそ、この「距離」の価値が生きてくるのです。
新しい贅沢は、距離の奥にある
都市の土地は限られています。だからこそ、多くの賃貸住宅は効率を追求します。
しかしTHE GRANDUO YOGAは、あえて長いエントランスアプローチを大切にしました。この距離が生む時間、この時間が生む心の余裕。それこそが、都市における新しい贅沢なのかもしれません。

50メートルの距離を経て家にたどり着く。その繰り返しが、日々の暮らしに特別なリズムを与える
帰宅するたびに、外出するたびに歩く、自分の敷地50メートルに、ここに住む人はある種の優越感を感じざるを得ないでしょう。2025年12月上旬竣工予定。用賀の街に、新しい距離感を持った住まいが誕生します。
text by AOYAMA Tsuzumi
THE GRANDUO YOGA
〒158-0097 東京都世田谷区用賀1-17
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