二子玉川駅から徒歩約6分。多摩川が10万年以上の歳月をかけて武蔵野台地を削り取った河岸段丘、国分寺崖線。「世田谷のみどりの生命線」と呼ばれるその緑地に寄り添うように、フェイスネットワークの最高級賃貸レジデンス「THE GRANDUO」シリーズの新たな物件が姿を現そうとしています。

設計を手がけるのは、HAN環境・建築設計事務所の松田毅紀さん。環境共生型建築を30年にわたり追求してきた建築家の手によって、2026年2月の竣工に向けたプロジェクトは、いま着実に歩みを進めているのです。


明治期にこのエリアは富裕層の別荘地として知られていたことをご存知でしょうか。

隅田川沿いの風光明媚なエリアが近代化による環境悪化で魅力を失うと、人々の眼差しは国分寺崖線へと向かいます。崖線の上からは富士山と多摩川を望み、豊かな緑が四季の移ろいを伝える。日本人の心に深く刻まれた原風景が、ここにはありました。

本物件の敷地は、北側に丸子川を挟んで崖線の緑地と接しています。世田谷区「風景づくり条例」における「水と緑の風景軸」に該当するこの立地は、開発における制約であると同時に、唯一無二の価値を紡ぎ出す源泉です。

「敷地のポテンシャルを最大限活かすこと。それが私たちの設計の出発点です」

HAN環境・建築設計事務所の松田毅紀さんはそう語ります。立地、歴史、気候風土、近隣との関係、そして微気候。土地が持つ記憶と可能性を丹念に読み解くことから、すべてが始まりました。

自然と呼応する建築

HAN環境・建築設計事務所は、1994年に故・花田勝敬氏が設立した事務所を前身とするそうです。2011年に松田さんが代表に就任し、2017年には自ら設計した集合住宅「梅ラウンジ」へ事務所を移し、自らの作品の中で日々を過ごしながら設計と向き合っています。松田さんが一貫して追求してきたのが「パッシブデザイン」。太陽、風、緑、大地。自然の恵みと建物自体の工夫を掛け合わせ、機械に頼りすぎることなく快適な室内環境を創り出す設計手法です。

その思想にもとづき、THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWAでは、外断熱による断熱性能の向上、開口部の強化、日射コントロールを徹底しました。太陽光パネルと蓄電池を組み合わせ、ZEH基準を満たす環境配慮型の共同住宅として計画。内外装材には再生材や自然素材を積極的に採用しました。つまり建物そのものが、環境との調和を体現する存在となるイメージです。

崖線の植生を「再生」する

本物件が掲げるのは「Regenerative(再生的)」という概念。それは緑を配置するのではなく、国分寺崖線本来の植生を「取り戻す」という考え方。その発想が、外構計画の根幹にあるのです。

建物外観はシンプルでミニマル。基礎による土壌への影響を最小限におさえ、緑化率は30%以上を確保しました。外構には透水性の舗装材を用い、雨水を地中へと還します。空気と水が循環する土中環境を回復させることで、植栽は自らの力で根を張り、育っていきます。
美しい緑を持続させる仕組みを、設計の段階から組み込む。それは長期的な資産価値への配慮であると同時に、この土地への敬意の表れでもあります。

土間がつなぐ、内と外

住戸設計で松田さんが重視したのが「中間領域」の存在です。 
玄関を入ると、まず土間があります。そこからホール、リビング、そしてバルコニーへ。内と外の境界を曖昧にしながら、光と風を招き入れ、敷地の緑を室内へと引き込む。日本の住まいが伝統的に大切にしてきた「縁側」の思想が、現代の集合住宅に息づいています。

バルコニーには十分な幅と奥行きを持たせました。大きな開口部を通じて室内と一体化するエクステリアスペースは、冬には日射熱を取り込み、夏には陽射しを遮る。環境装置としての機能と、プライバシーへの配慮を両立させているのです。

住居部分は、シンプルな直方体を3つのブロックに分割し、それぞれの住戸に「エントランス、土間、デッキ」という外部との接点を設け、すべての住まい手が、光と緑を享受できる構成となっています。

70㎡台から80㎡台の2LDKを中心とする全13戸。オープンキッチンを核としたLDKは18帖から32帖のゆとりを持ち、土間に面するホールはホームオフィスにも、アートを飾るギャラリーにもなります。暮らし方を限定しない、懐の深い空間です。

スマートレイによる、風のない空調がもたらす静謐

THE GRANDUOシリーズは、先進的な設備を積極的に取り入れることでも知られています。
本物件で採用される、輻射空調メーカー「グリーンレイズ輻射空調エンジニアリング」と「ファイテン」が共同開発した輻射式冷暖房システムも、その特徴を象徴する設備です。
冷温水を循環させるアルミニウム製パネルが、輻射熱によって室温をコントロールする。空気そのものを熱源とするため、煩わしい風は出ません。作動音は16db以下、ほぼ無音です。結果、従来のエアコンが抱えていた乾燥やハウスダストの問題から解放され、温度ムラのない穏やかな空気が室内を満たします。

パッシブデザインによる高い建物性能と、ファイテン輻射式冷暖房システムがもたらす自然に近い空調環境。窓の外には崖線の緑、室内には凪いだ空気。都心でありながら、深い森の中にいるような時間がここには流れています。

時間を味方につける

「質の高い建物を建てることで、周辺の住環境が向上し、街並みが豊かになる。時間の経過とともに建物や土地の魅力が高まり、資産価値も上がっていく」
松田さんの言葉は、THE GRANDUOシリーズを投機的な視点で考えるときの、建築家としての回答です。

選ばれ続ける建築とは何か。価値が落ちにくい建築とは何か。きっと、それは流行を追うことではないのでしょう。土地の記憶と対話し、自然と共生し、時間の経過を味方につける設計。その積み重ねが、やがて街の風景となり、次の世代へと受け継がれていくのです。

THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWAは、10万年の時が刻んだ地形の傍らで、住まいの本質を問いかけています。

 

Text by AOYAMA Tsuzumi

THE GRANDUO GAKUGEIDAIGAKU
〒152-0004 東京都目黒区鷹番2-9