前回の記事でご紹介した、THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWA SOILからほど近い場所に、新たなプロジェクトが進行中です。

「SEED(シード)」―― “種”を意味するこの建物は、店舗や事務所として利用される商業施設として計画されています。

SOILが「土壌」なら、THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWA  SEEDは文字通り「種」。二つの建物が呼応しながら、二子玉川の街に新しい緑のクラスターを形成していきます。


設計を手掛けたのは、SOILと同じくSUPPOSE DESIGN OFFICEの谷尻誠さんと吉田愛さん。
お二人はこの建物においても、自然との共存という一貫したテーマを追求しました。

「建築と植物を対等に扱い、周囲の環境そのものを作り上げる設計。そうした共存の仕方が理想だなと思っていました」と吉田さんは語ります。

働く場所に木陰をつくることの可能性とは

SEEDの特徴は、建物に設けられた中間領域。内でも外でもない、曖昧な空間です。壁面から張り出したテラスやバルコニーに植物が配され、自然な日陰を作り出します。

夏の強い日差しを和らげ、風を通し、緑の下で過ごす心地よさ。それは、公園の木陰で仕事をするような、新しいワークスタイルを可能にします。朝の柔らかな光が葉を透かし、午後には心地よい陰を作る。そんな自然のリズムが、働く時間に豊かさを与えます。

「普通のテナントビルとは違う魅力を、グリーンで作っていけると思うんです。店舗なら外の席にしてもいいし、オフィスならテラス席みたいな場所があってもいい」と吉田さん。

実際、こうした中間領域は様々な使い方ができます。人が出入りできる一部のバルコニーでは、カフェなら緑陰のテラス席として、クリニックなら待ち合い室の延長として、オフィスならリフレッシュスペースとして。使う人の想像力次第で、空間の可能性は広がっていきます。

境界を溶かす建築

外装には、パーフェクトウォッシュ(ショットブラスト)という手法が採用されました。つぶつぶとした質感が、光の加減で様々な表情を見せます。色味は薄茶色で統一され、SOILとの調和を保ちながらも、独自の個性を持っています。

「容積をとりながらも、地域性みたいなものを大事にしたい」という要望に対し、谷尻さんと吉田さんは緑を使って建物と街の境界を柔らかくすることを選びました。道路に面する部分も、空に向かう部分も、植物が建築の輪郭をぼかしていきます。

柱の配置も興味深い工夫がされています。規則的なグリッドで揃えずに、あえて不規則に配することで、ビルらしさを消し、より有機的な印象を与えています。斜めの階段、張り出したバルコニー、これらの要素が建物に動きを与え、植物と呼応しながら、生きた建築を作り出しています。

仕事の合間の深呼吸がクリエイティビティを育む

多目的に使えるスペースにも谷尻さんと吉田さんの丁寧な仕事が感じられるのがこのSEEDのひとつの特徴です。

「休むことも仕事の一部だっていう話をよくするんです。休んでる時にアイデアが生まれたり、コミュニケーションでひらめきが生まれたりしますよね」と谷尻さんは語ります。

木陰のテラスでコーヒーを飲みながら考え事をする。緑を眺めながら打ち合わせをする。そんな働き方が、クリエイティビティを高めていくのかもしれません。

街と呼応する商業建築を目指して

SEEDは、街全体のコンテクストの中で機能するようデザインされた建物です。二子玉川駅から続く人の流れ、SOILとの緑の連続性、多摩川へと向かう自然のグラデーション。これらすべてを意識した配置計画です。

「駅から来た時にどのようなアプローチで入っていくか、川の奥にある緑地との繋がりをどう作るか。この敷地を点ではなく、線として、面として見ていました」と吉田さんは振り返ります。

さらに、建物が用途を定義しすぎないことも重要だと谷尻さんは言います。
「これって商業と言ってますけど、住んだら家になるし、働いたらオフィスになる。どの用途にもなりうるぐらいニュートラルな状態であることが大切です」

時間とともに価値を増していく商業空間

SEEDは、時間とともに価値を増していく建築です。時間とともに植物が成長し、建物を包み込んでいきます。10年後には、緑豊かな木陰が、この場所で働く人、訪れる人に、特別な体験を提供しているでしょう。

ウェルビーイング志向のテナント、たとえば高級ブランドのショールーム、会員制サロン、クリエイティブな企業などにとって、SEEDは理想的な場所となるでしょう。顧客も従業員も、都市の中で自然を感じながら過ごすことができるのですから。

投資家にとっては、ESGやSDGsの観点からも価値の高い物件です。環境に配慮し、働く人の健康に資する建築は、これからの時代に求められる商業施設の形でしょう。街並みの景観向上にも貢献し、地域全体の価値を高めていく。そんな公共性を持った商業建築として、SEEDは評価されるはずです。

二子玉川の街に、新しい種を蒔く。THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWA SEEDは、緑の木陰で働くという、あたらしいワークプレイスを提案しています。都市と自然、仕事と休息、効率と余白。相反する要素が調和する場所で、新しい価値が芽吹いていくのです。

 

Text by AOYAMA Tsuzumi

THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWA SEED   テナント物件
〒158-0094 東京都世田谷区玉川2-16-5